
Case04
じゅーリス
みんなの「実利」を見える化、
新たな自治体クラウドファンディングを創る
「みんなで保育園のすべり台を買う」
新しい地域づくりを実現する自治体クラウドファンディング
働く人にとって地域との関わりは、時間的制約や物理的な距離によって、どうしても限定的になりがちです。特に子育て世代にとって、地域の課題に対して声を上げたくても、その手段や時間が限られているのが現実です。
一方で、地方自治体も住民税のふるさと納税による流出に悩み、住民の声を適切に行政運営に反映させる仕組みづくりに苦慮しています。
そうした課題を解決するために生まれた地域住民参加型クラウドファンディングサービス「じゅーリス(住民参加型自治体WishList)」は、地域住民が身の回りの公共サービス改善のために、細かく使い道を指定して寄付できる、新しいふるさと納税サービスです。
2024年の神奈川県藤沢市での実証実験では、「高山保育園の遊具リニューアルプロジェクト」が実施され、ふるさと納税制度を活用した寄付で、目標金額100万円を上回る寄付が集まる成果を達成しました。
※新しく設置された遊具で遊ぶ園児の皆さん
参考:地域住民参加型のクラウドファンディングサービス「じゅーリス」が協力した、神奈川県藤沢市 「高山保育園遊具リニューアルプロジェクト」がお披露目会を開催
ふるさと納税は、2023(令和5)年度に約1兆1175億円、約5895万件と、これまでに大きく受入額・受入件数を拡大してきました。
出典:「「ふるさと納税に関する現況調査結果」」総務省
その一方で、ふるさと納税による住民税の流出に悩む地方自治体も多く、地域住民も「返礼品がもらえるなら」と個人の「実利」に寄ることが多くあります。
そうした中で「じゅーリス」は、「みんなですべり台を買う」というプロセスをみんなで共有することで、「ふるさと納税」が地域住民にとっても公共性のある「実利」へ転換することを目指しています。
「みんなにとっての『実利』」を見える化
「じゅーリス」が目指す新しいふるさと納税の形
「じゅーリス」プロジェクトを主導するBlue Labの三橋容子さんが、「じゅーリス」の原型となる「地方自治体と個人投資家を地方債で繋ぐ新サービス」の企画を思いついたのは、みずほ銀行クレジットマネジメント部で地方自治体が発行する債券の個人向け販売管理業務を担当したことがきっかけです。
その新たな企画を、みずほフィナンシャルグループの社員発案型ビジネスコンテスト「みずほ GCEO チャレンジ Vol.3」に応募し、一次選考に通過後、プロジェクトの方向性を模索しながら続けた様々なインタビューを通じて、これまで見過ごされていた重要なニーズを発見します。それは、寄付金の使い道を特定したいという強いニーズを持つ人々の存在でした。
三橋:「ふるさと納税を利用されている方々にインタビューする中で、『寄付するのはいいけど、何に使われているのかよくわからない』という方々に多く出会いました。子育て世代ならば『自分の子供が通っている児童施設に寄付したい』という方もいますし、高齢者ならば『お世話になっている高齢者施設に寄付したい』という方もいらっしゃいます。そうした地域住民としての「実利」に潜在的なニーズを感じました」
三橋 容子/Mitsuhashi Yoko
大学卒業後みずほ銀行に入行、横浜支店で法人営業を担当。その後みずほ証券にて、運用商品開発、プロダクト営業推進、企画業務等に従事。みずほ銀行クレジットマネジメント部へ異動後、公共債の個人向け販売管理業務などを担当。みずほGCEOチャレンジVol3通過後、じゅーリス事業化に向けた検討のため、所管部となった法人業務部に2024年10月着任。
三橋:「住民は、自分の税金の使い道をちゃんと考えたいし、寄付した場合の使い道をちゃんと知って、実現されていることを確認したいと思っています。こうしたニーズに対して、『寄付したときに自分の住む地域だからこそのメリットがある使い道』を提示することで、ふるさと納税の参加のハードルを下げることができるのではないかと考えました」
実際に、神奈川県藤沢市「高山保育園の遊具リニューアルプロジェクト」では、他の保育園からも「これどうやってやったの?」という問い合わせが相次いだそうです。
三橋:「『住んでいる地域にふるさと納税すると、返礼品がないので応募が少ないのではないか』と思われるかもしれませんが、保育園に遊具が設置されることは地域住民にとっての『実利』です。そうした地域社会にとって意義のある公共性の『実利』に貢献したいというニーズは、想像したよりも多くの人が思っていたことでした」
三橋さんが強調する「実利」という概念は、「じゅーリス」の一つの価値観を表現しています。従来の公共事業や社会貢献活動は、ときに抽象的で効果がなかなか見えにくいものです。「じゅーリス」では、そうした効果を「見える化」するため、住民が直接的に恩恵を受けられる「具体的な成果物」を重視しているのです。
公民館へのピアノの設置、保育園の遊具整備、公営プールの建設──目に見えて分かりやすい成果物を通じて、住民の参画意識を高めていく。そんな「実利的な公共性」こそが、持続可能な住民参加を生み出すのではないかという仮説に基づいて進められているプロジェクトが「じゅーリス」です。
「ふるさと納税」を超えて、住民が実現したい社会を実現する「じゅーリス」が目指す未来
現在、地域社会では、ライフステージや時間的制約によって意見が反映されやすい人とそうでない人の格差が存在しています。たとえば、忙しい子育て世帯は、子供の遊び場などについて意見を言ったり、陳情したりするなどの”思い”を訴えに行く時間がありません。現実的な制約を抱える住民の声をどう拾い上げるかが重要な課題となっています。
三橋:「個人的な理想ではありますが、単に声の大きい人や活動的な人だけではなく、普段は共働きで忙しくて意見表明の機会が少ない子育て世代など、様々なバックグラウンドを持つ住民の様々な声が適切に反映されるような地域社会を実現したいです」
これから「じゅーリス」が目指す未来について、次のように語ります。
三橋:「『じゅーリス』は、時間がある人ない人、ライフステージによって意見が反映されやすい・されにくいという状況を改善し、すべての住民が地域づくりに参画できる仕組みの構築を目指したいと考えています。最終的には、ふるさと納税という手段を超えて、住民が実現したい社会を実現するためのより包括的なプラットフォームにしていければ嬉しいです」
「住民が実現したい社会を実現する」という三橋さんの言葉は、「じゅーリス」が目指すゴールを表現しています。
「じゅーリス」プロジェクト推進においては、みずほフィナンシャルグループのバックアップや、Blue Labの組織を通じた体系的なサポートが大きく寄与しているそうです。
三橋:「自治体へのアプローチや関係構築については、これまで地域経済に貢献する金融機関として存在し続けてきた『みずほフィナンシャルグループ』の信用や、各地域の人材によるところのバックアップが大きいです。また、Blue Labのプロフェッショナルなパートナーのみなさんに、デジタル戦略などをサポートしていただいています。こうした支えが「じゅーリス」の事業化に向けた大きな推進力になっています」
「じゅーリス」は、「ひとりひとりが思い描く、地域の理想の姿を自治体やみんなと実現する」というビジョンの下、新しい地域づくりの形を提示しています。「みずほGCEOチャレンジ」を通過した企画として、またBlue Labの新規事業として、これからのビジネスの発展と社会的インパクトの創出が大いに期待されています。
【「じゅーリス」へのお問い合わせはこちら】
こちらの公式サイト下部にあるフォームからお問合せください:フォームリンク
【「じゅーリス」関連情報】
• 「じゅーリス」公式サイト:https://ju-list.com/
• 2025/03/28「地域住民参加型のクラウドファンディングサービス『じゅーリス』が協力した、神奈川県藤沢市『高山保育園遊具リニューアルプロジェクト』がお披露目会を開催」
• 2024/11/15「地域住民のリクエストと寄付を集めるクラウドファンディングサービスにおける寄付募集の開始について」